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第9章 鑑定評価報告書

鑑定評価報告書は、
・不動産の鑑定評価の成果を記載した文書であり、
・不動産鑑定士が
 自己の専門的学識と経験に基づいた判断と意見を表明し、
 その責任を明らかにすること
 を目的とするもの
である。


鑑定評価報告書の作成指針 記載事項 附属資料

鑑定評価報告書の作成指針

鑑定評価報告書は、
・鑑定評価の基本的事項及び鑑定評価額を表し、
・鑑定評価額を決定した理由を説明し、
・その不動産の鑑定評価に関与した不動産鑑定士の責任の所在を示すことを
主旨とするものであるから、
鑑定評価報告書の作成に当たっては、
・まずその鑑定評価の過程において採用したすべての資料を整理し、
・価格形成要因に関する判断、鑑定評価方式の適用に係る判断等に関する事項を
 明確にして、
これに基づいて作成すべきである。

鑑定評価報告書の内容は、
不動産鑑定業者が依頼者に交付する鑑定評価書の実質的な内容となるものである。

したがって、
鑑定評価報告書は、
鑑定評価書を通じて依頼者のみならず第三者に対しても影響を及ぼすものであり、
さらには不動産の適正な価格の形成の基礎となるものであるから、
その作成に当たっては、誤解の生ずる余地を与えないよう留意するとともに、
特に鑑定評価額の決定の理由については、
依頼者その他第三者に対して十分に説明し得るものとするように努めなければならない。

記載事項

鑑定評価報告書には、
少なくとも次の10項について、
それぞれに定めるところに留意して記載しなければならない。

1.鑑定評価額及び価格又は賃料の種類

・正常価格又は正常賃料を求めることができる不動産について、
・依頼目的及び条件により限定価格、特定価格又は限定賃料を求めた場合は、
かっこ書きで正常価格又は正常賃料である旨を付記して
それらの額を併記しなければならない。

また、
総論第7章に定める「支払賃料」の鑑定評価を依頼された場合における鑑定評価額の記載は、
・支払賃料である旨を付記して支払賃料の額を表示するとともに、
・当該支払賃料が実質賃料と異なる場合においては、
 かっこ書きで実質賃料である旨を付記して実質賃料の額を併記する
ものとする。

2.鑑定評価の条件

・対象確定条件 又は
・依頼目的に応じ付加された地域要因若しくは個別的要因についての想定上の条件
について
・それらが妥当なものであると判断した根拠を明らかにするとともに、
・必要があると認められるときは、
 当該条件が付加されない場合の価格等の参考事項
を記載すべきである。

3.対象不動産の所在、地番、地目、家屋番号、構造、用途、数量等及び
対象不動産に係る権利の種類

4.鑑定評価の依頼目的及び条件と価格又は賃料の種類との関連

鑑定評価の依頼目的及び条件に応じ、
当該価格を求めるべきと判断した理由を記載しなければならない。

特に、
・特定価格を求めた場合には法令等による社会的要請の根拠、また、
・特殊価格を求めた場合には文化財の指定の事実等
を明らかにしなければならない。

5.価格時点及び鑑定評価を行った年月日

後日対象不動産の現況把握に疑義が生ずる場合があることを考慮して、
実際に現地に赴き対象不動産の現況を確認した年月日(実査日)をあわせて記載しなければならない。

6.鑑定評価額の決定の理由の要旨

鑑定評価額の決定の理由の要旨は、下記に掲げる内容について記載するものとする。

(1).地域分析及び個別分析に係る事項

・同一需給圏及び近隣地域の範囲及び状況、
・対象不動産に係る価格形成要因についての状況、
・同一需給圏の市場動向及び同一需給圏における典型的な市場参加者の行動、
・代替、競争等の関係にある不動産と比べた対象不動産の優劣及び競争力の程度
等について記載しなければならない。

(2).最有効使用の判定に関する事項

最有効使用及びその判定の理由を明確に記載する。

なお、
建物及びその敷地に係る鑑定評価における最有効使用の判定の記載は、
・建物及びその敷地の最有効使用のほか、
・その敷地の更地としての最有効使用
についても記載しなければならない。

(3).鑑定評価方式の適用に関する事項

鑑定評価の三方式を併用することが困難な場合にはその理由を記載するものとする。

(4).試算価格又は試算賃料の調整に関する事項

試算価格又は試算賃料の
・再吟味 及び
・説得力に係る判断
の結果を記載しなければならない。

(5).公示価格との規準に関する事項

(6).その他

総論第7章に定める「支払賃料」を求めた場合には、
その支払賃料と実質賃料との関連を記載しなければならない。

7.鑑定評価上の不明事項に係る取扱い及び調査の範囲

・対象不動産の確認
・資料の検討及び価格形成要因の分析
等、鑑定評価の手順の各段階において、
・鑑定評価における資料収集の限界
・資料の不備
等によって明らかにすることができない事項が存する場合の
評価上の取扱いを明示する必要がある。

その際、
・不動産鑑定士が自ら行った調査の範囲及び内容を明確にするとともに、
・他の専門家が行った調査結果等を活用した場合においては、
 当該専門家が調査した範囲及び内容を明確にしなければならない。
 

8.関与不動産鑑定士又は関与不動産鑑定業者に係る利害関係等

(1).関与不動産鑑定士又は関与不動産鑑定業者の対象不動産に関する利害関係等

・関与不動産鑑定士又は関与不動産鑑定業者について、
・対象不動産に関する利害関係又は
・対象不動産に関し利害関係を有する者との縁故若しくは特別の利害関係
の有無 及び その内容について記載しなければならない。

(2).依頼者と関与不動産鑑定士又は関与不動産鑑定業者との関係

・依頼者と
・関与不動産鑑定士 又は 関与不動産鑑定業者
との間の
・特別の資本的関係、
・人的関係 及び 取引関係
の有無 並びに その内容
について記載しなければならない。

(3).提出先等と関与不動産鑑定士又は関与不動産鑑定業者との関係等

・提出先等と
・関与不動産鑑定士又は関与不動産鑑定業者
との間の
・特別の資本的関係、
・人的関係 及び 取引関係
の有無 並び にその内容
(提出先等が未定の場合又は明らかとならない場合における当該提出先等については、その旨)
を記載しなければならない。

9.関与不動産鑑定士の氏名

10.依頼者及び鑑定評価書が依頼者以外に提出される場合における
  当該提出先の氏名又は名称

附属資料

・対象不動産等の所在を明示した地図・土地又は建物等の図面・写真等の確認資料、
・事例資料
等は、必要に応じて鑑定評価報告書に添付するものとする。

なお、
他の専門家が行った調査結果等を活用するために入手した調査報告書等の資料についても、
必要に応じて、附属資料として添付するものとする。

ただし、
当該他の専門家の同意が得られないときは、この限りでない。



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