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第7章 鑑定評価の方式~1.一般的留意事項
不動産の鑑定評価の方式には、
・『原価方式』
・『比較方式 』及び
・『収益方式』
の『三方式』がある。
『原価方式』は
不動産の再調達(建築、造成等による新規の調達をいう。)に要する原価に着目して、
比較方式は不動産の取引事例又は賃貸借等の事例に着目して、
収益方式は不動産から生み出される収益に着目して、
それぞれ不動産の価格又は賃料を求めようとするものである。
不動産の鑑定評価の方式は、
・価格を求める手法 と
・賃料を求める手法
に分類される。
それぞれの鑑定評価の手法の適用により求められた価格又は賃料を
・『試算価格』又は
・『試算賃料』
という。
価格を求める鑑定評価の手法 |
価格を求める鑑定評価の手法
不動産の価格を求める鑑定評価の基本的な手法は、
・『原価法』
・『取引事例比較法』 及び
・『収益還元法』
に大別され、
このほか三手法の考え方を活用した『開発法』
等の手法がある。
試算価格を求める場合の一般的留意事項
【一般的要因と鑑定評価の各手法の適用との関連】
価格形成要因のうち『一般的要因』は、
不動産の価格形成全般に影響を与えるものであり、
鑑定評価手法の適用における各手順において常に考慮されるべきものであり、
価格判定の妥当性を検討するために活用しなければならない。
【事例の収集・選択】
鑑定評価の各手法の適用に当たって必要とされる事例には、
・原価法の適用に当たって必要な『建設事例』
・取引事例比較法の適用に当たって必要な『取引事例』 及び
・収益還元法の適用に当たって必要な『収益事例』
(以下「取引事例等」という。)がある。
これらの取引事例等は、
鑑定評価の各手法に即応し、
適切にして合理的な計画に基づき、
豊富に秩序正しく収集し、選択すべきであり、
投機的取引であると認められる事例等適正さを欠くものであってはならない。
取引事例等は、次の要件の全部を備えるもののうちから選択するものとする。
(1)次の不動産に係るものであること
- 近隣地域又は同一需給圏内の類似地域若しくは必要やむを得ない場合には近隣地域の周辺の地域(以下「同一需給圏内の類似地域等」という。)に存する不動産
- 対象不動産の最有効使用が標準的使用と異なる場合等における同一需給圏内に存し対象不動産と代替、競争等の関係が成立していると認められる不動産(以下「同一需給圏内の代替競争不動産」という。)。
(2)取引事例等に係る取引等の事情が正常なものと認められるものであること 又は 正常なものに補正することができるものであること。
(3)時点修正をすることが可能なものであること。
(4)地域要因の比較及び個別的要因の比較が可能なものであること。
【事情補正】
・取引事例等に係る取引等が特殊な事情を含み、
・これが当該取引事例等に係る価格等に影響を及ぼしているときは
適切に補正しなければならない。
現実に成立した取引事例等には、
・不動産市場の特性
・取引等における当事者双方の能力の多様性 と
・特別の動機
により売り急ぎ、買い進み等の特殊な事情が存在する場合もあるので、
取引事例等がどのような条件の下で成立したものであるか
を資料の分析に当たり十分に調査しなければならない。
特殊な事情とは、
正常価格を求める場合には、
正常価格の前提となる現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる諸条件を欠くに至らしめる事情
のことである。
【時点修正】
取引事例等に係る取引等の時点が価格時点と異なることにより、
その間に価格水準に変動があると認められる場合には、
当該取引事例等の価格等を価格時点の価格等に修正しなければならない。
【地域要因の比較及び個別的要因の比較】
取引事例等の価格等は、
その不動産の存する用途的地域に係る地域要因 及び
当該不動産の個別的要因を反映しているものであるから、
・取引事例等に係る不動産が同一需給圏内の類似地域等に存するもの 又は
・同一需給圏内の代替競争不動産である場合
においては、
・近隣地域と当該事例に係る不動産の存する地域との地域要因の比較 及び
・対象不動産と当該事例に係る不動産との個別的要因の比較を、
取引事例等に係る不動産が近隣地域に存するものである場合においては、
対象不動産と当該事例に係る不動産の個別的要因の比較を
それぞれ行う必要がある。