Danji Real Estate

MAIN不動産鑑定評価基準>土地価格に関する鑑定評価


各論前文

不動産鑑定士は、
総論において記述したところに従い
自己の専門的学識と応用能力に基づき、個々の案件に応じて不動産の鑑定評価を行うべきであるが、
具体的な案件に臨んで的確な鑑定評価を期するためには、
基本的に以下に掲げる不動産の種類別に応じた鑑定評価の手法等を活用する必要がある。

土地価格に関する鑑定評価


更地 建付地 借地権及び底地 区分地上権 農地 林地 宅地見込地

更地

更地の鑑定評価額は、

  • 更地 並びに 自用の建物及びその敷地の取引事例に基づく『比準価格』 並びに
  • 土地残余法(建物等の価格を収益還元法以外の手法によって求めることができる場合に、敷地と建物等からなる不動産について敷地に帰属する純収益から敷地の収益価格を求める方法)による『収益価格』

を関連づけて決定するものとする。

再調達原価が把握できる場合には、『積算価格』をも関連づけて決定すべきである。

当該更地の面積が近隣地域の標準的な土地の面積に比べて大きい場合等においては、
さらに次に掲げる価格を比較考量して決定するものとする
(この手法を『開発法』という。)

(1)分譲マンション想定

一体利用をすることが合理的と認められるときは、
価格時点において、当該更地に最有効使用の建物が建築されることを想定し、
販売総額から通常の建物建築費相当額及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除して得た価格

(2)宅地分譲想定

分割利用をすることが合理的と認められるときは、
価格時点において、当該更地を区画割りして、標準的な宅地とすることを想定し、
販売総額から通常の造成費相当額及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除して得た価格

なお、
・配分法 及び
・土地残余法
を適用する場合における取引事例及び収益事例は、
敷地が最有効使用の状態にあるものを採用すべきである。

建付地

建付地は、
建物等と結合して有機的にその効用を発揮しているため、
建物等と密接な関連を持つものであり、
したがって、
建付地の鑑定評価は、
建物等と一体として継続使用することが合理的である場合において、
その敷地について部分鑑定評価をするものである。

建付地の鑑定評価額は、
原則として更地としての鑑定評価額を限度とし、
・配分法に基づく『比準価格』 及び
・土地残余法による『収益価格』
を関連づけて決定するものとする。

この場合において、
・当該建付地の更地としての最有効使用との格差
・更地化の難易の程度
等敷地と建物等との関連性を考慮すべきである。

借地権及び底地

借地権・底地概論

借地権及び底地の鑑定評価に当たっては、
借地権の価格と底地の価格とは密接に関連し合っているので、

以下に述べる諸点を十分に考慮して相互に比較検討すべきである。

  1. 宅地の賃貸借等 及び 借地権取引の慣行の有無とその成熟の程度は、
    都市によって異なり、
    同一都市内においても地域によって異なることもあること。
  2. 借地権の存在は、必ずしも借地権の価格の存在を意味するものではなく、また、
    借地権取引の慣行について、
    ・借地権が単独で取引の対象となっている都市又は地域と、
    ・単独で取引の対象となることはないが
     建物の取引に随伴して取引の対象となっている都市又は地域
    とがあること。
  3. 借地権取引の態様
    ア 借地権が一般に有償で創設され、又は継承される地域であるか否か。
    イ 借地権の取引が一般に所有者以外の者を対象として行われる地域であるか否か。
    ウ 堅固建物の所有を目的とする借地権の多い地域であるか否か。
    エ 借地権に対する権利意識について借地人側が強い地域であるか否か。
    オ 一時金の授受が慣行化している地域であるか否か。
    カ 借地権の譲渡に当たって名義書替料を
      一般に譲受人又は譲渡人のいずれが負担する地域であるか。
  4. 借地権の態様
    ア 創設されたものか継承されたものか。
    イ 地上権か賃借権か。
    ウ 転借か否か。
    エ 堅固の建物の所有を目的とするか、
      非堅固の建物の所有を目的とするか。
    オ 主として居住用建物のためのものか、
      主として営業用建物のためのものか。
    カ 契約期間の定めの有無
    キ 特約条項の有無
    ク 契約は書面か口頭か。
    ケ 登記の有無
    コ 定期借地権等(借地借家法第二章第四節に規定する定期借地権等)

借地権

(1) 借地権の価格

借地権の価格は、
借地借家法(廃止前の借地法を含む。)に基づき土地を使用収益することにより
借地人に帰属する経済的利益(一時金の授受に基づくものを含む。)を
貨幣額で表示したものである。

借地人に帰属する経済的利益とは、
土地を使用収益することによる広範な諸利益を基礎とするものであるが、
特に次に掲げるものが中心となる。

ア 土地を長期間占有し、独占的に使用収益し得る借地人の安定的利益
イ 借地権の付着している宅地の
  ・経済価値に即応した適正な賃料と
   実際支払賃料
   との乖離(以下「賃料差額」という。) 及び
  ・その乖離の持続する期間
  を基礎にして成り立つ経済的利益の現在価値のうち、
  慣行的に取引の対象となっている部分

(2) 借地権の鑑定評価

借地権の鑑定評価は、
・借地権の取引慣行の有無 及び
・その成熟の程度
によって
その手法を異にするものである。

ア 借地権の取引慣行の成熟の程度の高い地域

借地権の鑑定評価額は、
・借地権及び借地権を含む複合不動産の取引事例に基づく『比準価格』 並びに
・土地残余法による『収益価格』
を関連づけて得た価格を標準とし、
・当該借地権の設定契約に基づく賃料差額のうち取引の対象となっている部分を
 還元して得た価格(『賃料差額還元法による価格』) 及び
・借地権取引が慣行として成熟している場合における
 当該地域の『借地権割合により求めた価格』
を比較考量して決定するものとする。

この場合においては、次に掲げる事項を総合的に勘案するものとする。

(ア)将来における賃料の改定の実現性とその程度
(イ)借地権の態様及び建物の残存耐用年数
(ウ)契約締結の経緯並びに経過した借地期間及び残存期間
(エ)契約に当たって授受された一時金の額及びこれに関する契約条件
(オ)将来見込まれる一時金の額及びこれに関する契約条件
(カ)借地権の取引慣行及び底地の取引利回り
(キ)当該借地権の存する土地に係る更地としての価格又は建付地としての価格

イ 借地権の取引慣行の成熟の程度の低い地域

借地権の鑑定評価額は、
・土地残余法による収益価格を標準とし、
・当該借地権の設定契約に基づく賃料差額のうち取引の対象となっている部分を
 還元して得た価格(『賃料差額還元法による価格』) 及び
・当該借地権の存する土地に係る
 『更地又は建付地としての価格から底地価格を控除して得た価格』
を比較考量して決定するものとする。

この場合においては、前記「借地権の鑑定評価における勘案事項」を総合的に勘案するものとする。

底地

底地の価格は、
借地権の付着している宅地について、
借地権の価格との相互関連において
賃貸人に帰属する経済的利益を貨幣額で表示したものである。

賃貸人に帰属する経済的利益とは、
・当該宅地の実際支払賃料から諸経費等を控除した部分の
 賃貸借等の期間に対応する経済的利益 及び
・その期間の満了等によって復帰する経済的利益
の現在価値をいう。

底地の鑑定評価額は、
・実際支払賃料に基づく純収益等の現在価値の総和を求めることにより得た『収益価格』 及び
・『比準価格』
を関連づけて決定するものとする。

この場合においては、前記「借地権の鑑定評価における勘案事項」を総合的に勘案するものとする。

また、底地を当該借地人が買い取る場合における底地の鑑定評価に当たっては、
当該宅地又は建物及びその敷地が同一所有者に帰属することによる市場性の回復等に即応する経済価値の増分が生ずる場合があることに留意すべきである。

区分地上権

区分地上権の価格は、
一般に区分地上権の設定に係る土地(以下「区分地上権設定地」という。)の経済価値を基礎として、
権利の設定範囲における権利利益の内容により定まり、
区分地上権設定地全体の経済価値のうち、
・平面的・立体的空間の分割による当該権利の設定部分の経済価値 及び
・設定部分の効用を保持するため他の空間部分の利用を制限することに相応する経済価値
を貨幣額で表示したものである。

この場合の区分地上権の鑑定評価額は、
・設定事例等に基づく比準価格
・土地残余法に準じて求めた収益価格 及び
・区分地上権の立体利用率により求めた価格
を関連づけて得た価格を標準とし、
区分地上権の設定事例等に基づく区分地上権割合により求めた価格
を比較考量して決定するものとする。

農地

公共事業の用に供する土地の取得等
農地を農地以外のものとするための取引に当たって、
当該取引に係る農地の鑑定評価を求められる場合がある。

この場合における農地の鑑定評価額は、
・比準価格を標準とし、
・収益価格を参考として
決定するものとする。

再調達原価が把握できる場合には、
積算価格をも関連づけて決定すべきである。

なお、公共事業の用に供する土地の取得に当たっては、
土地の取得により通常生ずる損失の補償として農業補償が別途行われる場合があることに留意すべきである。

林地

公共事業の用に供する土地の取得等
林地を林地以外のものとするための取引に当たって、
当該取引に係る林地の鑑定評価を求められる場合がある。

この場合における林地の鑑定評価額は、
・比準価格を標準とし、
・収益価格を参考として
決定するものとする。

再調達原価が把握できる場合には、
積算価格をも関連づけて決定すべきである。

なお、公共事業の用に供する土地の取得に当たっては、
土地の取得により通常生ずる損失の補償として立木補償等が別途行われる場合があることに留意すべきである。

宅地見込地

宅地見込地の鑑定評価額は、
・比準価格 及び
・当該宅地見込地について、価格時点において、転換後・造成後の更地を想定し、
 その価格から
 通常の造成費相当額及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除し、
 その額を当該宅地見込地の熟成度に応じて適切に修正して得た価格
を関連づけて決定するものとする。

この場合においては、
特に都市の外延的発展を促進する要因の近隣地域に及ぼす影響度 及び
次に掲げる事項を総合的に勘案するものとする。

1. 当該宅地見込地の宅地化を助長し、又は阻害している行政上の措置又は規制
2. 付近における公共施設及び公益的施設の整備の動向
3. 付近における住宅、店舗、工場等の建設の動向
4. 造成の難易及びその必要の程度
5. 造成後における宅地としての有効利用度

また、熟成度の低い宅地見込地を鑑定評価する場合には、
・比準価格を標準とし、
・転換前の土地の種別に基づく価格に宅地となる期待性を加味して得た価格
 を比較考量して
決定するものとする。



不動産鑑定評価基準トップページへ